1994年10月8日、
東京の恵比寿に新名所が誕生しました。
その名前は「恵比寿ガーデンプレイス」。
その商業施設の中に新しいタイプのワインショップができたのですが、
その名前は「ワインマーケットPARTY」。
私はそのお店の初代店長を務めさせていただきました。
先日コンピューターを整理していたら、
その計画、店づくり等をまとめた資料が出てきました。
既に開業から20年以上たっているので、
発表しても差し支えないだろうと判断し、
その資料を公開させていただこうと思います。
かなりの長文になるので、
数回に分けて、発表させていただきます。
1. 前提条件
PARTYは1994年10月8日に、
恵比寿ガーデンプレイスの一角で
「株式会社恵比寿ワインマート」という名の子会社が運営する
サッポロビールの直営事業の一つとして開業した。
よって事業計画においては、以下を予件とした。
(1)サッポロビールの100%子会社としての運営
1)サッポロ商品の販売
飲料については基本的にサッポロ製品のみを販売する。
しかし、輸入ワイン、輸入ミネラルウォーターについては例外とした。
他社品に関しては、ワイン、ミネラルウォーターとも
サッポロ製品のみでは顧客にとって魅力的な品揃えとは言えず、
特にワイン専門店という性格上必要との判断が下されたためである。
2)独立採算
「パイロット店舗として赤字分は宣伝費として補填する」というような考え方もあるが、
筆者自信そのような形では赤字の垂れ流しとなり、
またパイロット店舗としての機能も充分果たせないと考える。
また、サッポロビールとしてもそのようなことが許される環境にはない。
3)行儀の良い商売
メーカー直営店として周辺の酒販店との融和をはかり、
商品の値付けに当たっては基本的に上代価格を維持する。
(値引き販売は行わない。)
(2)カーブ・タイユバンの併設
恵比寿ガーデンプレイスに同時に開業したシャトーレストラン基本契約
(サッポロビール、フランスとの提携先のヴリナ氏、ロビュション氏の三者契約)の中に
「ヴリナ氏のワインを販売するワインの小売店舗(カーブ・タイユバン)を
サッポロが運営する」との条項があるが、
シャトーレストランが酒類小売免許を取得することが不可能であったため、
株式会社恵比寿ワインマートがサッポロビールからの運営委託を受ける形で
運営することとなった。
その結果、恵比寿ワインマート社はPARTY部門と
カーブ・タイユバン部門から構成されるということとなった。
それによるPARTYに対する影響は次のとおり。
1)内装コストの圧縮:
カーブ・タイユバンの内装についてはヴリナ氏の意向により
シャトーレストランと同じ設計者が採用され、
そのため非常にコストのかかったものとなった。
故にPARTYの内装は恵比寿ワインマートの開業前費用総額を抑えるため
圧縮せざるを得なかった。
最終的に、PARTYの内装コストは什器備品をすべて含み坪60万円程度となった。
2)棲み分け:
カーブ・タイユバンにはフランスの三ツ星レストランのワイン、
即ち最高の造り手の最高のヴィンテージのワインが揃っている。
そのため、PARTYはコンセプトもカジュアル路線を狙い競合しない品揃えを行った。
(3)立地
シャトーレストラン基本契約の関係から
カーブ・タイユバンをシャトーに隣接させる必要があり、
恵比寿ガーデンプレイス地下1階の一番奥のシャトーの隣に位置する。
センター広場より少し奥まった場所であり、フリの客を誘引しにくい場所。
ガーデンプレイス内の商業立地としてはかなり悪い場所である。
実際、開業2年後の現在でもガーデンプレイスへは
来たことのある人からの場所の問い合わせがある。
(4)面積
恵比寿ガーデンプレイスの中に30万本のストックを持つワインセラーをつくるというのが
オリジナルの計画であったため、面積も大きなものであった。
計画を進める中で家賃の高い恵比寿という土地に
ワインを寝かせる(資金を寝かせる)場所をつくることに意味を見いだせず、
「ワインセラー」から「ワインショップ」に計画を変更した。
面積については、当初の計画よりかなり縮小したものの、
PARTYの店舗およびセラー合計で126坪と、
ワイン専門店としてはたいへん広いものとなった。詳細は以下のとおり。
|
㎡ |
坪 |
PARTY |
店舗 |
328 |
99 |
セラー |
90 |
27 |
カーブ・タイユバン |
店舗 |
90 |
27 |
セラー |
114 |
34 |
その他(事務所、倉庫等) |
241 |
34 |
合計 |
863 |
261 |
(5)相応のコスト負担
サッポロビールの100%子会社ではあるが、
家賃、共益費等の恵比寿ガーデンプレイスのテナントが負担するべきコストは
すべて負担する。